1946年、戦後最初のロールス・ロイスモデルとして発売された''シルバーレイス''。

スタンダードモデルのMKⅥ(ベントレー)/シルバードーンよりもホイールベースは7インチ長く、全て顧客オーダーによりコーチビルドされるスペシャルモデルだった。

戦後から続くロールス・ロイス製の直列6気筒/OHVエンジンは大幅に熟成。
シルバーレイスに搭載された4,257ccの新たな直列6気筒OHVエンジンである
【Fヘッド】は、戦前エンジンとの共通箇所がボアとストロークのみ。
ウォータージャケットも大幅に改良し、より実用的に進化した。

シンクロ付4速M/Tだったトランスミッションは、
オプションとして1952年よりA/Tを選べる様になった。
排気量は4,566ccに拡大し、ホイールベースが6インチ拡大されたLWB仕様が
導入され、そのタイミングでSWB仕様のオーダーが終了。
LWBは、1959年にファンタムⅤが導入されるまで続いた。
総生産台数は
・SWB・・・1,144台
・LWB・・・639台 計・・・1,783台

当時、世界中で販売されていた自動車の内、贅沢の最高峰として君臨。
当車両の優雅なボディは、アルファロメオやパッカード、メルセデスなどを手掛け
戦中は英国戦闘機スピットファイアの極めて複雑な翼の先端なども製作した
''フリーストーン&ウェッブ''(ロンドン北部にあった)が仕上げた作品。
このシルバーレイスは、イギリスの有名なサーカス団''チッパーフィールド''の
長であったジミー・チッパーフィールドが所有していました。

実は、非常に謎が多い当車両。
元々は、A.ウェバー氏が1953年11月にフーパー社(これまた著名なコーチビルダー)で
オーダーをかけた個体。
なので最初のオーダー書にはコーチビルダーはフーパーと記載されています。
どこかのタイミングで''なにか''があり、
フリーストーン&ウェッブボディになり、チッパーフィールド氏に納車されました。

が、これだけではありません。
なんとこのボディは1940年代に製造され、【WLE27】と言うシャーシに載っていた物。
テストレコードには''古いボディを新しいシャーシに搭載''と記載があるので
紛れもなくオリジナルではあるが…これ以上の事実がわからない。
納車までの間に、デリバリー宛が代わりボディまで謎な組付け方をするなんて
非常に謎が多く魅力的な車両です。

オーナーであった、ジミー・チッパーフィールド氏は
その後、ドライブスルー型サファリパークの開発を行いました。
2頭のトラの子とその世話人と写る当車両が記録されています。

その後のオーナーも全て記録されておりますが…
それは、次期オーナー様だけの秘密にいたしましょう。
